新年度のグローバルキャリア講座は、お昼休みに行うTED方式の講演でスタートしました。
第1回の講師は、内閣府国際平和協力研究員の板垣文子さん。NGO職員として、また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のメンバーとして、紛争地域等での活動後、内閣府国際平和協力本部事務局に研究員として参加されています。
この日は、玉川SGHが掲げる「人権」というテーマを踏まえて、板垣さんの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)での経験を元に、“難民保護の仕事”についてお話していただきました。
新緑の映える暖かな陽気の中、校舎アトリウムには100人を超える生徒たちが集まり、熱心に耳を傾けます。
中3の生徒もちらほらといて、どんなことをやるのかまずは見に来たという新入生も大勢集まっていました。
まず自己紹介で板垣さんが、「難民問題に興味を持つきっかけは背が低かったことです」と語り始めると、みんなが注目。そして、その背が低いというコンプレックスがもとになり、「自分よりもさらに小柄な緒方貞子さんが世界を舞台に活躍していることに感動して、この活動に興味を持ちました」と伝えると、会場に親しみが広がりました。
そして、難民とは紛争によって暮らしを壊されたり、宗教的、民族的、政治的な理由で人権侵害を受けてきた人々であることを、具体的な例や写真を示しながら説明。たとえば、デモ活動に参加する市民を弾圧する政府は、戦車を出し、不当に逮捕して狭い収容所に押し込み、何日も収監する。そんな行為があたり前のように行われていることを、これまでの現場での経験をもとに伝えてくださいました。
現地での難民たちの支援の仕事は、「とにかくひとりひとり、一家族一家族に話を聞いて、それぞれのケースに合わせてサポートすること」と板垣さんはおっしゃいます。
難民申請をしながらも、移動の際の劣悪な環境のため身分証明書を紛失して不法移民とみなされて収容される人々も多いため、そんな人々と面接して難民であるかどうかを審査する仕事もされたそうです。
他にも「児童婚や児童労働の問題とそうしなければならない背景」、「難民として認定されUNHCRが支援する居住施設で共同生活ができるようになったケース」、「耳の不自由な少年がドイツで手術を受けることができた例」など様々な事例をあげて、難民となった人々の人権が保障されるように支援する“難民保護”の仕事を伝えました。
講演後は、「人権侵害をやめるよう政府に働きかけることはあるのですか?」「いちばんショッキングだったエピソードは何ですか?」「活動をとおして自分が変わったことはありますか?」「成長した難民の少年たちはその後どのように生きているのですか?」といった質問が次々に上がりました。
全体をとおして自然な語り口の板垣さんのお話からは、「世界には今、そういう地域が実際に存在しているのだ」ということが、ことさら特別ではない本当に起こっている現実の課題として、じわりと深く伝わってきました。